毎日食べている野菜やお米。どうやって育てられているか、知っていますか?
「タネを撒いて、水をあげたら育つんじゃないの?」
それだけでは育ちません。
野菜やお米は、土の中の栄養を吸って育ちますが、毎年作物を育て続けると、土の栄養はどんどん減っていきます。
栄養が減った土で育てるには、外から栄養を補う必要があります。それが「肥料」です。
そして、肥料を使う使わない、どんな肥料を使うかによって、農業は以下の3種類に分かれていきます。
- 慣行農業(かんこう農業)
- 有機農業(ゆうき農業)
- 自然栽培(しぜんさいばい)
スーパーで売っている野菜のほとんどは、このうちの「慣行農業」で作られています。
「自然栽培」で作られた野菜がお店に並ぶことは、ほとんどありません。
3つの農法比較
主な3つの農業の特徴を比べたものが、こちらになります。

スーパーに並ぶ野菜は”ほぼ”慣行農業
スーパーに行けば、いつでも、同じ野菜が、同じ値段で並んでいますよね。
これが当たり前になっているのは、慣行農業のおかげです。
慣行農業とは、化学肥料・農薬・除草剤を使って、野菜やお米を育てる農法のことです。

慣行農業は、野菜やお米を安定生産するために確立された技術で、日本の食卓を長年支えてきました。
化学肥料を使うと、野菜は早く、大きく育ちます。
農薬を使うと、害虫や病気から作物を守れます。
除草剤を使うと、草取りの手間が大幅に減ります。
その結果、安定して、大量に、作物を作れるようになりました。
現代の食卓に欠かせない、農業の主流です。
ただ、化学肥料で育てた野菜は、栄養を外から与えられるため、細胞に余分な水分を溜め込みやすくなります。
その結果、早く大きく育つ一方で、味が薄くなりやすいという特徴があります。
天然由来の農薬は使える有機農業
次は、有機農業です。
いわゆる「オーガニック」と呼ばれる野菜やお米は、この有機農業で育てられています。
先ほど、スーパーで売っている野菜のほとんどは、化学肥料と農薬を使って育てた「慣行農業」とお伝えしました。
「有機農業」は、化学肥料と化学由来の農薬を使いません。
ただし、「これだけはOK」というものがあります。

ひとつは、有機肥料(堆肥)です。
有機肥料は、牛や豚のふん・枯れ葉などを発酵させて作った肥料を使います。
もうひとつは、農薬です。
化学合成農薬は使えませんが、害虫の被害がどうしても防げない時には、天然由来の農薬を使うことが認められています。
有機農業=天然、無農薬ではありません。
農薬も肥料も除草剤も使わない自然栽培
最後は、自然栽培です。
先ほど有機農業(オーガニック)は、有機肥料と天然由来の農薬は使えるとお伝えしました。
自然栽培は、肥料も、農薬も、除草剤も、全部ゼロ。
土が持っている力だけで、野菜を育てるのが自然栽培です。

自然栽培は、「土が本来持っている力」を、そのまま活かして野菜を育てます。
肥料を入れないから、野菜は自分で根っこを深く、太く伸ばして栄養を探しに行きます。
その結果、生命力がギュッと凝縮された、力強い野菜が育つのです。
ただし、作るのはとても難しいんですね。
肥料という栄養を使わないので、育ったり育たなかったりバラバラ。そのため収穫量が安定しません。
農薬を使わないので、野菜やお米が虫に食べられて売り物にならないリスクも、慣行農業より高くなります。
だから、自然栽培の野菜は国内でほとんど流通していないんですね(国内の流通量は0.7%以下です:農林水産省「有機農業をめぐる事情」2022年度末時点)
なぜ、肥料を与えなくても野菜が育つのか?
その秘密は、土の中にあります。
土の中には、1gあたり数億〜数十億もの微生物が生きています。
微生物は、落ち葉、枯れ枝、虫の死骸。土に落ちたものを、せっせと分解して、植物が吸収できる栄養に変えていきます。

外から肥料を入れなくても、土の中でずっと栄養が循環しているのです。
根っこと微生物の「ギブ・アンド・テイク」
実は、植物と微生物はただ共存しているだけでなく、お互いに「取引」をしています。
植物は、光合成で作ったエネルギー(糖など)を根っこから土の中に放出します。
微生物はそのエネルギーをもらう代わりに、植物の根っこだけでは届かない遠くの場所にある栄養分や水分を運んでくれます。
植物が「エネルギー」を払って、微生物から「栄養と水」を買っているイメージです。

この絶妙な助け合いのシステムが、肥料なしでも野菜を育てる力の源です。
微生物が増えると、土がふかふかになる
微生物が元気に活動している土は、土がふかふかになります。
水はけが良く、空気も通り、根っこが深く伸びやすくなります。
根っこが深く伸びるので、土の中の栄養をより広く、より深く吸い上げられるので、作物が元気に育つのです。
肥料を使わずに育てたら?
自然栽培の話を聞くと、「肥料を使わずに育てたらいいんじゃないの?」と思う方がいます。
実は、これがとても難しいのです。
肥料をやめると、野菜が育たなくなる
毎年同じ畑で野菜を育て続けると、土の中の栄養はどんどん減っていきます。
栄養が減ってしまうので、肥料を使わなければ、数年のうちに土はやせ細り、野菜がまともに育たなくなります。
だから、外から栄養を補うために肥料を使わざるを得ないのです。
化学肥料を使うと、今度は虫と草との戦いが始まる
ところが、化学肥料には思わぬ副作用があります。
化学肥料は、窒素、リン、カリウムを使いますが、野菜が窒素を大量に吸収すると、体内にアミノ酸がたくさん増えます。
そしてアミノ酸は、害虫の大好物。
だから化学肥料をたっぷり使った野菜には、虫が大量に集まってくるのです。
そして外虫を駆除するために、農薬が必要になるわけですね。
さらに、化学肥料で土が栄養豊富になると、雑草も一緒に元気に育ちます。
雑草は、野菜が育つための栄養をとってしまうので、雑草を枯らすために、除草剤が必要になるわけです。

慣行農業が化学肥料・農薬・除草剤をセットで使うのには、こういう理由があるからです。
だから、自然栽培は奇跡に近い
慣行農業の農家さんでさえ、毎年、虫・草・病気と格闘しながら、農薬と除草剤を駆使して作物を作っています。
そのおかげで、私たちは不自由なく食べ物が食べられていますよね。
そんな中、農薬も除草剤も化学肥料も、一切使わずに野菜を育てるのが自然栽培です。
自然栽培農家さんは、日本に本当にわずかしかいません。国内の流通量は、0.7%以下です。
スーパーで自然栽培の作物を見かけないのは、作るのがとてつもなく難しいから。
裏を返せば、自然栽培のお米や野菜に出会えたときは、本当に希少なものに出会えた、ということです。
自然栽培だと野菜が美味しくなる
微生物が元気な土で育った野菜は、根っこを深く伸ばして、土の中のさまざまな栄養をしっかり吸い上げます。
ミネラル、旨み成分、香り成分。肥料で育てた野菜には入りにくい栄養素まで、ギュッと凝縮されます。
自然栽培の野菜やお米を食べて
「なんか、この野菜、味が濃い」
「香りが全然違う」
と感じるのは、気のせいではありません。
土の豊かさ、過酷な環境で育った野菜の生命力が、そのまま味になっているのです。
大人は「身体にいいから」という理由で食べることができます。
でも、子どもは正直です。美味しくなければ、食べません。
自然栽培の野菜を食べた子どもが、野菜嫌いなのに「美味しい!」「これは食べる!」と言った。いつもより野菜をたくさん食べた。
そんな話を、よく聞きます。
子どもの本能が「美味しい」と感じるのは、生命力の高さを、体が感じ取っているからかもしれません。
しかも、自然栽培の作物は、美味しいだけではありません。
腐りにくい
自然栽培の野菜は腐りにくいという特徴があります。
自然栽培の野菜は細胞がギュッと詰まっているため、同じ条件で保存しても、長持ちします。
冷蔵庫に一週間以上入れても、腐ったり、傷んだりしにく特徴があります。
皮ごと食べられる
農薬を使っていないので、皮をむかずにそのまま食べられます。
にんじん、じゃがいも皮ごと。お米は、玄米のまま。
野菜の栄養は、皮のすぐ内側に多く含まれているので、野菜本来の栄養を丸ごと摂ることができます。
小さなお子さんも、安心してそのまま食べられます。
まとめ
味が濃く、香りが強く、腐りにくく、皮ごと食べられる。
それが、土の力だけで育った自然栽培の野菜が持つ、本当の美味しさです。
百年の食卓が届けるのは、この自然栽培の野菜だけです。
ぜひ試してみてください